JOURNAL音楽祭かわら版
2023/01/27
羽根のように軽やかで、魂宿る名演奏の響きを
フルートとハープ。ともに古い歴史を持ち、神話にも登場する神秘的な楽器です。このたいへん相性の良い楽器を、世界最高峰の名手が奏でる愛のコンサート! 楽しみでなりません。
プログラムには選り好みがなく耳に馴染みの作品が並びます。なんと言っても“歌”がテーマでしょう。個人的に楽しみなのはチャイコフスキー『エフゲニー・オネーギン』より「レンスキーのアリア」。近年フルートで演奏されることも多く、一度聴いたら耳に残る旋律が美しく情熱的で、存分に酔わされてしまいそう。ビゼー繋がりで、名曲『アルルの女』より「メヌエット」でクールダウンの後は、ボルヌ『カルメン幻想曲』へ。フルートの超絶技巧で一気にクライマックスへとノックアウトされることを期待します!
そもそもフルートは“歌う”楽器。振動の元となるリードを使わず、自らの息の柱をコントロールして響きを作るので(息の半分は外に逃がしてしまいます)、声楽にも近いと思います。奏者の内なる情熱が伝わりやすいシンプルな楽器です。加えて、舌つき(タンギング)によって音が始まるので、奏者の話す言語によっても個性が出ます。シュッツさんはオーストリアのチロル州出身ですので、地元のブラスカペレ(民族音楽)で培った演奏から、土地の言葉、土地の音楽、ユーモアまでも感じられるかもしれませんね。ウィーン・フィルなど数々のオーケストラのソロ奏者としての世界水準の音! とにかく羽根のように軽やかでかつ魂宿るフルートの響きが和歌山城ホールを満たすことでしょう。
もう一つの楽しみは、ハープとの共演です。ハープの吉野直子さんは言うまでもなく日本を代表する奏者で、多くの世界的フルート奏者との共演も豊富。シュッツさんとも信頼関係が深く、息の合った名演奏が期待できます。バレンタイン目前の夜、夢見るような美しく優美な響きのシャワーを体感できることでしょう!。
同世代で刺激し合う2人の夜会は、最後はジャズっぽく展開しそう。「カルメン」はラストで「アメリカや~!」と叫びたくなるすごく面白い曲ですから、皆さんもぜひお楽しみに!(カルメン、スペインの人やけどね)
※ 「カール=ハインツ・シュッツ×吉野直子」公演は、2月10日(金)19時開演、和歌山城ホール小ホールにて。前売チケット発売中。
2023年1月12日付 わかやま新報「とらふすクラシック」286より